こんばんは、鈴木です。
以前渋谷で「deco」というフランス料理店のシェフをされていた室田さんから「独立します!」というご連絡を頂き、オープン翌日の2016年8月18日に「ラチュレ」へ足を運んできました。
予定が詰まっていたので1泊2日の強行軍でしたが、結論から言うとそれだけの価値があるお店だったな~と満足しています。
室田さんは「ラ・シャッス」の依田さんと並んで日本でもトップクラスのジビエマスターだと鈴木は(勝手に)思っているんですが、依田さんが素材に寄り添うような優しい味付けを得意としているのに対し、室田シェフはゴリゴリのクラシックフレンチマニアといった印象でした。
ただ、これは「deco」の頃の話であって、今回の「ラチュレ」では人が増えてお店の規模が少し大きくなったこともあり、かなり挑戦的なメニューも増えていましたね。
そしてその挑戦的メニューが「ジビエを知り尽くした室田シェフでなければ作れない」お料理だったことが自分にはとても印象的でした。
というわけでまずはお酒のメニューから(写真は全てクリックで拡大します)。
プレモルがある!鈴木は普段あまりビールを飲まない方ですが、東京に行くと蒸し暑くてビールが飲みたくなる気持ちはわかります。
グラスワインは税別で1杯1,000円~1,700円の設定でした。
ワインリストはこんな感じ。待て待て…こりゃ安すぎるだろ…
市価の2倍どころか1.5倍くらいで出してるぞ。マジですか…これでやっていけるのか…凄いな。
食後酒やソフトドリンクもしっかりラインナップ。
いよかん100%のジュースってちょっと飲んでみたいな。
とか何とか言いつつ、鈴木の頼んだ食前酒はワンパターンにシェリー。あー、さっぱりするわー。
丸っこくて可愛らしい葉っぱの入った木箱が置かれて、これはなんだろうと思ったら…
その上にエゾシカの毛皮が入った箱がドン!
そしてその上に鎮座するのは…
「鹿のブラッドマカロン」!
聞いてみると鹿のブーダンノワールを挟んだマカロンとのことで、小さいながらも味は濃厚。
うめーなこれ。ていうかよくこんなの考え付くなぁ。
中のブーダンはマッタリしてるんだけど、マカロン生地のほろ苦さがいい感じに調和してる。
そして塩気がちょうどいい。言い方が安っぽくてアレですがあまじょっぱいのって美味しいよね。
続いてはキノコの本を模した箱が置かれて…
開けてみるとこんな小さなタルトが。
これは室田シェフ、「ラチュレ」で確実に星ゲットを狙ってるなぁ。
(2018.01.10追記:やっぱり1つ星取りました笑)
タルトの具は確か熊のベーコンとジロール茸だったはず。
これまた「もっと食べたくなる」味でした。いいアミューズ・ブーシュだと思います。
それに「deco」から「ラチュレ」に生まれ変わったんだな~ってのが凄くよくわかる。
「deco」に頻繁に通ってた常連さんからしたら凄く楽しみが増えたんじゃなかろうか。
開店記念ということもあってか品数も多かったようで、更に追加でもう一品出ました。
とうもろこしのスープと…右のはポップコーンを再構築したような料理だったかな?
フォアグラと合わせてあったんだっけかな…1年前のことなのでもう思い出せない…
美味しかったのは間違いないw
ライ麦がふわりと香る美味しいパン。いいねいいねー。
鳩の形をしたバターナイフも可愛い。女性人気出そうだな!あざといぞ(笑)!
え、まだ冷前菜到達しないの…?サービスしすぎてない?
というわけで「鶏のガランティーヌとプチサラダ」が出てきました。
バロティーヌという呼び方もあるようですが、これは温製にして出す場合の呼び方らしいです。
あ~これ美味いな~というわけで、白ワイン様にご登場願います。
合わないわけが無い。
このソルベは何だったか忘れてしまったけど、ガランティーヌと合わせて食べるとより冷たく、よりさっぱりして良かったです。
最近行かれた方のレビュー見てるとあまり見かけないから、この時だけだったのかな。
夏だからさっぱりと食べてもらいたかったのかもしれませんね。
まだアミューズ・ブーシュ続くんかーい!というわけで…「キジのコンソメ」。
いや、全然嫌なわけじゃなくめっちゃ嬉しいんですけど、独立オープンの翌日でこんなにポンポン料理出しまくって、厨房上手く回せるかが心配になっちゃいますよ。凄いな。
写真1枚しか撮ってないのが残念なんだけど、このキジのコンソメは室田シェフらしさが存分に出た逸品でした。
かなりの期間寝かせて、しかも腐敗せずに上手く熟成しているのがよくわかる濃厚なコンソメ。
これは噛んで飲むコンソメだな。ちびっと口に含んで全体に行き渡らせてから、ワインを一杯。たまらん。
以前室田シェフにキジを送って頂いた時は確か「空気銃で捕ったんです」って言ってたから、状態の良さには自信があるんだろうな。じゃないとここまで上手く熟成させられないと思う。
こういうのが食べられると、わざわざ北海道の東の果てから東京まで行って良かったな~と感じますね。
出たなクラシックお化け。「ラチュレ」でも健在で安心した(笑)。
というわけで、「ジビエのパテ・アン・クルート」が冷前菜その1です。
確かイノシシ、ヒグマ、エゾシカだったかな。モザイク模様が美しい!
自分、こういうのが好きなんですよね~。しみじみと美味い。
周りを包むサクリとしたブリゼ生地と、多種多様な素材を使った複雑な旨みたっぷりのパテ。
そして上部にたっぷり充填されたジュレのコクと舌触り。総合力が問われる料理です。
あぁもう美っ味いな~~~~~。
ちびちびちびちび食べながらず~~~っとワイン飲んでたくなりますね。
丸ごと買ったら何万するのかわからないけど、お土産で1本北海道に持ち帰りたいですよ(笑)。
ちょっとずるっこして、白ワインがあるのにグラスで赤ワインも出してもらっちゃいました。
たまらんです。
続いて冷前菜その2は「鯵と桃のマリネ ホエーとバジルのソース」。
ソースは乳清(ホエー)とバジルを使ったコクはありつつさっぱりしたもの。
プレゼンテーションは可愛いけど、意外にも骨太で重層的な旨さ。
どこからこういう料理を思いつくのか想像ができないけど、旨い。
レストランで食べる料理はこうでなくちゃと思わず唸ってしまう出来でした。
この料理が出た時点で、「ラチュレ」は可愛いプレゼンテーションで(室田シェフの趣味の)ゴリゴリクラシックフレンチを覆い隠したお店だと確信(笑)。
「鮎のパイ包み焼き ブールブランソース」
です。
最強です。めっちゃ旨いですこれ。
サクサクのパイ生地にフワフワのムース、そして整然と並ぶ鮎。
鮎の繊細な食感と…ムースに入ってるのは川海苔って言ってたかな。これが実によく合う。
そして「どクラシック」なブールブランソース(バターと白ワインのソース)を付けて口に入れたらもう…!
これを食べるためだけに、自分は夏の「ラチュレ」に行っても後悔しないと言い切れる。うむ。
相当試行錯誤しただろうな…。
ほんと旨いです。室田シェフはパイの端っこ切ってどかしてたけど、それも食べたいです。
プレゼンテーションとしてはこの方が美しいんだろうけど、自分は食いしん坊だからパイ丸ごと食べたい(笑)。
特に北海道には鮎がいない(道南には少しいるけど)し、こういう身質の魚がいないからたまに凄い食べたくなるんだよね。
ここに来ないと食べられない料理があるって凄い強みだと思うので、こういう料理が「ラチュレ」にどんどん増えてくれたらいいな。
「ラチュレ」プレオープンイベント、メインの肉料理は「イノシシのロースト」。
え?この時期にイノシシ?といぶかしんだこちらの顔を見て、室田シェフが
「自分もこの時期のはどうかな~と思ったんですけど、猟師さんが勧めるので取ってみて驚きました」
とのこと。
このめちゃくちゃ切れるオリジナルデザインのナイフでザクッといってみると…
…めっちゃくちゃ美味い、これ。
今まで食べたイノシシの中でも1、2を争うぞマジで。
皮目の脂をガリッと焼ききった香ばしさもさることながら、これは肉の旨み自体がすげぇ。
自分で狩猟して色んな肉獲って食べてきたけど、ここまで高品質な肉にはそうそう会えるもんじゃない。
これは完全に一期一会だな…。
ソースに毎回めちゃ気合を入れる室田シェフが割りと抑え目にしてたのはこういうわけか…。
付け合わせも、旨みは強いけどゴリゴリに香りが主張するわけじゃないオーヴォリ(タマゴタケ)を合わせて、イノシシの邪魔にならないよう配慮してる。素晴らしい。ここまで隙が無いぞ「ラチュレ」。
デセール(デザート)も、「deco」の頃と違ってパティシエさんを雇ったことでよりパワーアップしてる。
ビーツのチップスが洒落てるなぁ。
味や見た目はもちろん、食感もバラエティに富んでいて実に満足感のあるデザートでした。
ラチュレのパティシエさん凄い才能だな。
今はたまにデザートコースなんてのもやってるみたいだけど、全皿こんなレベルなら確かに食べてみたい。
ハーブティーとの相性もバッチリ。
最後に出てきたのが「熊の脂を使ったプチフィナンシェ」。
最初は「マジか!?」と思ったんですが、これが意外と上品で合う。
熊は毎年沢山手に入るし、バターとの配合分量を調整しながら作ればうちでも出来そうだな。
ただ、あまり大きいサイズにすると匂いが鼻につきそうだから、プチフールがベストなのかな。
いや~、楽しませて頂きました。
とまぁ、大満足で楽しませてもらった「ラチュレ」の新規開店オープニングイベント。
行ったのは1年前なので最初は記事を書けるか心配でしたが、写真を見てると意外に思い出すものですね。
「deco」の頃より大幅に洗練されたお店の雰囲気と室田シェフの料理には脱帽です。
あ、この日のお隣さんは「ラチュレ」のご近所さんにある超有名フレンチのシェフ(とそのお連れ)でした。
自分の前に出されるアミューズ・ブーシュを見て「うちもこんな感じのやらないとダメなのかな…」みたいな不安げな表情をしていましたが、しなくていいと思います(笑)。そういうのは求めてないw
同じくジビエを得意とする「ラ・シャッス」「マノワ」とは趣を異にしますが、フランス料理好き、ジビエ好きなら「ラチュレ」は行っておいて損はないですね。
ジビエを知り尽くしているからこそチャレンジできる調理法、料理というものがあり、完成度も他の「ジビエ出してます」というお店とは一線を画しています。
ハンターさんにとっても色々と発見があると思いますし、プレゼンテーションの可愛さと渋谷駅からのアクセスの良さもあってデートスポットとしても優秀。
かつ値段も3つ星に比べてお手ごろとあれば、こりゃ使い勝手抜群ですよ。
気になる方はぜひ行ってみてくださいね。